メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
飲んでいるのは二人とも温かいほうじ茶だ。私が大好きなお酒を飲まないことを爽ちゃんは心配してくれたけれど、卒論の口頭試験が心配で眠れなくて、とごまかした。

湯呑みを持つ爽ちゃんの左手薬指にはエンゲージリングが光っている。去年の春に旦那さんの蒼大(あおと)さんから『爽乃に特別なリングを贈りたいから協力して欲しい。』と連絡があり、お父さんとお母さんに相談して、かつてお母さんのエンゲージリングを作ってくれたクリエイターさんを紹介してもらった。

10月のハンドメイドイベントに二人が来てくれた時に初めて見せてもらったそのリングはとても素敵だったけれど、その時の二人の照れた笑顔の方がずっと眩しく輝いていた。

「爽ちゃんは理系だけど、蒼大さんと結婚する為に大学院に進まなかったんでしょう?」

「そ、そんなことないよ!下にきょうだい達いるし、蒼大に出逢う前から大学卒業したら就職するって決めてたんだから。」

爽ちゃんは色白の頬を赤く染め焦って言う。爽ちゃんと蒼大さんは高校卒業直前に出逢って付き合い始めた。大学在学中に蒼大さんが一人暮らしを始めて、一昨年の4月に就職してからすぐ2人で暮らしていた。
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