メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「でも爽ちゃん達、最初から家族公認のお付き合いだったし、早くから将来を意識していたみたいだから、大学卒業と同時に結婚するのかと思ってたよ。」

「蒼大がね、結婚は司法書士試験受かってからが良かったんだって。私には特にそういう思いなかったけど、友達や会社の人の話だと男の人ってそういうところあるみたい。自分で決めた地点まで到達してから結婚、みたいな。」

「・・・やっぱり、夢って大事だよね。」

「え?」

「あ、ううん。でも、爽ちゃんの海外研修があって離れちゃうから、やっぱり先に結婚したくなっちゃったのかな?」

「うん・・・そう・・・みたい。」

茹でダコみたいに真っ赤になって俯く爽ちゃんはすごく可愛くて、言葉でつつき回したくなってしまう。

「蒼大さん、何年か前に会った時はもっと繊細な雰囲気だったのに、こないだイベントに来てくれた時はたくましいと言うかパワー溢れる素敵な感じになってたよね。エンゲージリング作りたいって連絡してきた時もすごく真剣で・・・。」

「わ、私の話はもういいよ。杏ちゃんは誰かいないの?」

何気なく発せられたその言葉に胸がズキンと痛む。

───そう言えばハンドメイドイベントの時、暖人とのことを爽ちゃんに相談したいなって思ってたんだっけ・・・でも、もう・・・。

封印したばかりの恋心に意識がいってしまい慌てて気づかないふりをした。押し花にしたはずの恋の花がまだまだ瑞々しくて焦る。

「・・・私は、恋愛とは無縁の人生を送ると思うよ。」

「もう、まだまだこれからなのにそんなこと・・・ん?」

爽ちゃんは結婚祝いの時計に目をやってハッとした表情になった。
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