メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「杏ちゃん、この時計、杏ちゃんも一緒に作ってくれたんだよね?ハンドメイドイベントに一緒に出店してた時計職人の男の人と。」

「そうだよ。あ、動作確認したから不良はないと思うけど、もし見た目で何か気になるところがあったら私がやっちゃったところだと思う。初めて使う工具ばかりだったから・・・ごめんね。」

「ううん、そうじゃなくて。これ、作るの時間かかってるよね。すごく凝って作ってくれてるし。」

「うん。イベント終わってから作り始めて出来たのは11月末。彼の家で一緒に作ったの。難しかったけど、すごく楽しかったよ。」

「彼の家で・・・!?・・・杏ちゃん、私の思い違いだったら申し訳ないけど、二人はその・・・ハンドメイド仲間とか友達とか、それだけの関係なの・・・?」

じっと爽ちゃんの涼しげな目を見る。物心つく前から、むしろお母さんのお腹の中にいる時から私を見守ってくれているその目はすごく落ち着くもので、だからこそ心がぐらついた。

「・・・あはは、実はね、私、彼のこと好きだったんだ。でもね、さっき恋心を封印したの。」

顔は笑っているはずなのに涙がぽろぽろと流れてきた。涙をこぼして泣くのはいつぶりだろう。親の前でだって小学校に上がってからは泣いた記憶がない。小さい頃はあったかもしれないけれど、記憶に残っている中で爽ちゃんの前で泣くのもこれが初めてだった。

料理がすっかり冷めるまで泣いて、落ち着いてから爽ちゃんに暖人とのことを全て話した。人に相談できるようになったのも、喜怒哀楽を見せることができるようになったのも彼のお陰だった。

爽ちゃんは4人きょうだいの一番上でしっかりしているけれど涙もろい為、途中から泣いていた。明らかに私よりたくさん涙を流してくれている彼女を見て私は少しずつ冷静になっていった。
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