メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
2月14日、バレンタイン、そして俺の28歳の誕生日───例年通り忘れていたけれど、母親と弟からメッセージで祝われて思い出した。誕生日に恋人がいたこともあったけれど、一人で過ごしたことの方が多いから慣れているはずなのに今年に限ってやたらと寂しかった。

寒さのせいもあるだろう。東京では雪が降る予報や積もる予報が外れることがよくあり、『降る降る詐欺』とか『積もる積もる詐欺』とかよく言われているのに、今日は珍しく予報通り雪が積もっていた。

公園の前を通ると雪だるまが作られているのが見えた。子供達がわいわい言いながら皆で作ったのだろう。雪合戦もしたかもしれない。

雪合戦・・・時計作りの後にお茶をしている時、杏花と話したことを思い出す。イベントで宿泊した時、夜の海で貝がらを見て『これがマドレーヌだったら。』という話をしたのに関連して、『雪合戦の雪玉がスノーボールクッキーだったら。』という話をしたのだ。もしそうなったら帽子を脱いで飛んでくるクッキーをキャッチする、とかそもそも相手に投げないで全部自分で食べる、とか、端から見たらすごくくだらない話であろうが、俺達は真剣に楽しく盛り上がった。あんな風に話せるのは世界を探しても彼女だけだろう。

───なんですぐあいつのことを思い出してしまうんだ。あいつへの想いは心の奥にしまったはずなのに。
< 205 / 290 >

この作品をシェア

pagetop