メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
年明けに再会した時、彼女は出逢った頃よりなんだか大人っぽくなっていた。と言っても『小学生寄りの中学生』が、『中学生』になったくらいのイメージだったが。中学生になると女子が急に大人びる、まさにあの感じだった。それから一ヶ月が経って彼女は今や『高校生寄りの中学生』だった。
「暖人!?」
大好きなその声に呼ばれた自分の名前に目頭が熱くなってくる。もう二度と聞けないと思っていた。でも、この状況は・・・。
雪が積もっていたし、よくあるシチュエーションとして足を滑らせた杏花を男が抱きとめたのではないか、と思った。きっとそう思いたかったのだろう。けれど体を離した彼女の手を男が捕まえて指を絡めたのを見て、ああ、そうじゃないんだと思った。
「・・・悪い、邪魔して。」
本当は『お似合いだよ。幸せにな。』とでも続けたかったけれど、とてもじゃないが言えなかった。踵を返して歩き出した俺を杏花が『暖人。』と呼び止めた。
「お誕生日おめでとう。」
振り返った俺に彼女が笑顔で言ってくれたその言葉は暗い雪空の下、家の中で暖かく燃える暖炉のようだった。けれど、ただの祝いの言葉にしては何だか重いような、何か別の意味も込められているような気もした。しかしそれがなんなのか想像する心の余裕はなかった。
「・・・おお。」
曖昧に会釈をして歩き出す。駅までこんなに遠かっただろうか。
彼女は男を『店長』と呼んでいた。あの大手雑貨メーカーの店舗の店長なのだからエリートなのだろう。小柄でアイドルグループに一人はいるかっこいいというより可愛いらしい外見は杏花とやたらお似合いだった。若く見えるが俺と同じ歳くらいかもしれない。綺麗な夜景が見えるレストランを知ってそうだったり、女子が喜ぶ甘い言葉をたくさんささやいてくれそうな、俺よりずっと彼女にふさわしい男に見えた。
「暖人!?」
大好きなその声に呼ばれた自分の名前に目頭が熱くなってくる。もう二度と聞けないと思っていた。でも、この状況は・・・。
雪が積もっていたし、よくあるシチュエーションとして足を滑らせた杏花を男が抱きとめたのではないか、と思った。きっとそう思いたかったのだろう。けれど体を離した彼女の手を男が捕まえて指を絡めたのを見て、ああ、そうじゃないんだと思った。
「・・・悪い、邪魔して。」
本当は『お似合いだよ。幸せにな。』とでも続けたかったけれど、とてもじゃないが言えなかった。踵を返して歩き出した俺を杏花が『暖人。』と呼び止めた。
「お誕生日おめでとう。」
振り返った俺に彼女が笑顔で言ってくれたその言葉は暗い雪空の下、家の中で暖かく燃える暖炉のようだった。けれど、ただの祝いの言葉にしては何だか重いような、何か別の意味も込められているような気もした。しかしそれがなんなのか想像する心の余裕はなかった。
「・・・おお。」
曖昧に会釈をして歩き出す。駅までこんなに遠かっただろうか。
彼女は男を『店長』と呼んでいた。あの大手雑貨メーカーの店舗の店長なのだからエリートなのだろう。小柄でアイドルグループに一人はいるかっこいいというより可愛いらしい外見は杏花とやたらお似合いだった。若く見えるが俺と同じ歳くらいかもしれない。綺麗な夜景が見えるレストランを知ってそうだったり、女子が喜ぶ甘い言葉をたくさんささやいてくれそうな、俺よりずっと彼女にふさわしい男に見えた。