メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「作業部屋・・・見たいな。」

「目キラキラさせやがって。小学生の社会科見学か。」

「小学生でもいいから・・・。」

「さっき『大人の女性』とか言ってたくせに、都合のいいやつめ。ここより更に散らかってるし、企業秘密だからな・・・。」

渋い顔で言われる。そんな顔でそんな風に言われてますます見たくなった。

「お願い。」

「子犬みたいな目で見るな。そういう目で訴えれば何でも言うこと聞いてもらえると思ったら大間違いだからな。」

「そんなこと思ってないよ。」

「・・・じゃあ、お前も見せろよ。」

なんだか彼の声が急に妖しさをまとったように感じるのは気のせいか。

「?作業部屋なんてないよ。」

「違う。こういう時はだな・・・。」

声と同じ妖しさをまとったような彼の目線がこちらに来る。ワンピースのウエストより上に結んだベージュのリボン、その上の部分とリボンより下の部分をサッとなぞった彼の目線は、顔の方に昇って来て、慌てて逸らされた。

「何を見せればいい?あ、逆立ちとか?それは出来ないけど、手品なら少し・・・。」

「い、いや、何でもない。しょうがねーから特別に見せてやるよ。」

なぜか焦った様子で早足で廊下の方に行く彼を急いで追いかけた。
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