メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
どのくらいの時間をかけてすることなのかはわからない。でも暖人はかなりの時間をかけてじっくりゆっくり私を自分のものにしてくれた。秒針は文字盤の上を何周もして、全てが終わった後には長針も短針も始まった時とは全く違う位置にいた。

暖人のすることに対して私が意図せずピクッとしてしまったり、我慢できずに声を漏らしてしまうと、彼の動きがより積極的になった。でもその度に暖人は優しく私の髪を撫でてくれたり手を握ったりしてくれて、安心できた。

私は初めてで全然上手に出来ていないけれど、それでも二人で時間を紡いでいる感じがして嬉しかった。

彼がまるで丹念にやすりをかけるように触れてくれた私の全身は今までに知らなかった感覚を覚え、彼仕様に変えられていった。

最初に唇、それから体が上と下から変わっていき、最後に真ん中より少し下の部分が甘く仕様変更された。

不思議だと思ったのは上半身に触れられているのに、触れられている部分だけではなく下半身のその部分までが反応することだった。

誰にも触れられたことがないところに触れられ、初めて自分の中に他の人が入ってきた。聞いたことのない音、出したことのない声、無意識に動いてしまう体、初めて見る男性の体、彼の荒い息遣いや苦しげな表情・・・羞恥と恐怖を超えたところにある快感を私はついに知ってしまった。大好きな人に求められる喜びと彼を求める本能的と言ってもいいくらい貪欲な気持ちも。

自分がそれらを感じていることがすごく恥ずかしいのにすっかり溺れてしまっていた。一度味を知ってしまったら忘れることが出来ない至極のスイーツのように。

今まで暖人に触れてほしいと思っていた気持ちは充分過ぎるくらいに満たされた。繰り返し触れられたり吸われたり甘噛みされた体中がヒリヒリしているくらいだ。

彼のものになった自分は今までの自分とは全く違うようで戸惑った。でも全身が見えない幸せのベールに包まれているようだった。
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