メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
*****

いつの間にか眠ってしまっていて目が覚めると夕方になっていた。暖人と心も体も繋がったのは夢だったのではないかと思ったけれど、起きた時隣に生まれたままの姿の彼がいて私を優しく見つめてくれていたし、心にも体にも幸せな余韻が色濃く残っていて、ああ現実なんだと実感した。


「お風呂ありがとう。温まった。」

「バスタブに湯入れたのなんて久しぶりだよ。」

「服もありがとう。」

「ぶかぶか過ぎるけどな・・・。」

暖人は私から目を逸らすとローテーブルの上を指差す。

「・・・これ。」

「え?」

彼が指差す先にはマグカップがある。

「これって・・・。」

「お前のだよ。今まで特に決まってるのなかったろ?でも実は買ってあったんだ。二人で結婚祝いの時計作り始めた頃に見つけて、思わずお前の分も色違いで買っちゃって・・・でも恋人でもないのにペアカップなんて引かれそうで出す勇気なかった。」

壁の方を見て照れたように言う彼の斜め45度の顔を見つめる。

「・・・何だよ、見るなよ。」

そう言われたのでマグカップに目を移す。色は淡いピンク色で砂時計のイラストが書かれている。暖人が使っているマグカップはこれと色違いの淡い水色のもので今も彼の目の前に置いてある。前から『可愛いな。』と思っていたカップだった。2つのマグカップと彼を順番に見ていると、染料が布に染みていくようにじんわりと喜びが体全体に広がる。

「だから見るんじゃね・・・!?!?」

思わず彼にぎゅっと抱きついていた。

「・・・ありがとう。すごく嬉し・・・!?!?」

言っている途中でクッションの上に押し倒された。
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