メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「ごめんなさい。私、高園さんに想いをもらってばかりで・・・。」

最後のバイトが終わり、スタッフルームで店長に暖人とのことを話し頭を下げた。

「いいんだよ。恋愛ってこういうものだよ。皆の想いが叶うわけじゃない。だから尊いんだ。」

「高園さん・・・。」

「初めて涙、見せてくれたね。それだけで俺は充分嬉しいよ。」

ぼやける視界の中にどこまでも優しい店長の微笑みが見えた。

「それに俺だってもらったよ。杏花ちゃんのこと好きになれて幸せだった。この時間は宝物だよ。ありがとう。」

『時間』その言葉が心を揺らす。

「・・・一つ、聞いていいかな?」

「はい。」

「彼ももしかしてクリエイターなの?」

「そうです。」

「やっぱりそうか。前に会った時、そういう雰囲気の人だなと思ったから。Remiさんが載ってる雑誌見た時彼女は俺と同じ歳だったけど、彼もそうなのかな?」

「はい。」

「・・・そっか。俺、コンプレックス感じちゃうな。」

店長は力なく俯いた。なんだか彼らしくなくて少し戸惑ってしまう。

「コンプレックスって・・・?」

「実は俺、クリエイターになりたかったんだ。木工が好きで。」

「え?そうだったんですか?」

「本当は高校卒業後芸術系の学校に進みたかった。でも俺は手先が壊滅的に不器用だったしデザイン力もなかった。それで諦めたんだ。」

そう言えばキャンプのブッシュクラフトの時、店長はそれに参加せずに皆が出した木くずを片付けたり、制作中の私達の写真を撮ったり、皆で設営したテントまわりを整えたりなどしていて、制作はしていなかった。既に何度も経験しているからかと思ったが、まさかそういう理由だったなんて・・・。
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