メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
付き合い始めてから半年ほどして俺達は一緒に暮らし始め、同じマンションの一人用の部屋から二人用の部屋に引っ越した。

有り難いことに俺の仕事が段々忙しくなってきて、杏花が簡単な制作工程や梱包・発送、顧客とのやり取り、材料の発注や売り上げ管理等の事務作業を手伝ってくれたり、家事をしたりしてくれることが増えて───もちろん、仕事のこと以外にも彼女と少しでも長くいたかったからというのもあって───半同棲状態になっていたからだ。時計の修理の下請けの仕事ももうしなくなっていた。

一人の時は制作している時間以外の生活───食事、風呂、睡眠、家事など───はどうでもいい、ただしなければならないからする、という行為だった。でも、杏花といると全てが意味のあることになった。

俺は料理は全くしないし、杏花もお菓子以外はほとんど作れないということなので、二人で本や動画を見ながら色々作ってみた。失敗しても二人なら楽しくて、全てが思い出になった。その他の家事に関しても俺も彼女も同じくらい大ざっぱだったので特にぶつかることもなかった。

制作で忙しかったり行き詰まっても、杏花がいるだけで癒された。彼女と暮らし始めてから、家に流れる空気が温かくて優しいものになったように感じていた。
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