メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
そして今日───付き合い始めてからちょうど一年が経つ3月末───俺達はハコイリギフト社内にある小ホールにいた。今日はクリエイター オブ ザ イヤーの授賞式だ。信じられないことに俺は新人クリエイター賞を授賞した。あの店長に対するライバル意識が効を奏したのかもしれない。

「この喜びを誰に伝えたいですか?」

壇上で司会の彩木さんが俺にマイクを向ける。

「俺の夢を応援してくれた母親と、俺を拾ってくれた彩木さんに。」

そう言うと実家の愛媛から会場に駆け付けてくれた母が大粒の涙を流し、彩木さんは微笑んでくれた。

「それから、自分も社会人になったばかりで大変なのに、クリエイターとしての自分と一人の男としての自分にたくさんのバワーをくれて、一番近くで全力で支えてくれた大切な人に───。この賞は彼女と二人で頂いたものだと思っています。」

その言葉に会場の一番後ろにいた杏花がぱあっと笑顔になった。浴びているスポットライトよりもその笑顔の方がずっと眩しかったし、二人で積み上げてきたものが認められたことが誇らしかった。壇上に上がるなんて大の苦手なのに、俺は堂々と胸を張ることができた。
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