メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
確認すると今私と暖人が住んでいるファンタジックなマンションは元々お父さんが住んでいたところで、お母さんと付き合い初めてすぐに同棲し、結婚してからも今の家を建てるまで住んでいたところだった。私もお母さんのお腹の中にいたらしい。

しかも驚くべきことに暖人が一人で住んでいた部屋にお父さんが一人で、そして今私と暖人が住んでいる部屋にお母さんと一緒に暮らしたことがわかった。なんて不思議な縁だろう。暖人の部屋が私にとって落ち着く場所だったのは、彼といるからということや、あのマンションが実家に似ているからという理由だけではなかったのだ。しかも実家の外観は建築士のおじいちゃんがあのマンションをお手本に設計したものだった。マンション一階のベーカリーカフェで売られているのと似たパンを実家で作っていたのも偶然ではなかったのだ。

「暖人さんの住所は契約の時に見ていたけど、あの辺は町の名前も変わったみたいだし、マンション名はなく部屋番号のみ書かれていたから気づかなかったです。杏花は荷物が少なくてお引っ越しも宅配便で送って終わったし、二人の家に遊びに行きたいね、と言いつつ、暖人さんが忙しくなられたのでこれからお邪魔するところだったから。」

お母さんが暖人のお母さんにそう説明したので私も『マンションもカフェもすごく素敵だから、父と母が来た時に驚かせようと思って詳しく話してなかったんです。』と話すとお父さんとお母さんも『そうだったんだ。』と嬉しそうに微笑んだ。『夫婦は似てくる』と言うが、二人の笑顔はそっくりだと思う。

「あのマンションは、恋が叶うマンションなんですよ。」

お母さんが言うと暖人のお母さんが『素敵!そういうロマンティックなの大好き!』と乙女のように目をキラキラさせた。

「ああ、役所って近くにあります?ついでだから婚姻届の証人欄にサインして行っちゃおうかと思って。そしたら二人が出したい時にいつでも出せるでしょ。」

「おい母さん、早まるなよ。ちゃんと言わせてください。葉吉社・・・お父さん、杏花さんを僕に・・・。」
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