メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
こんな気持ちになるのは初めてだった。

すやすやと眠る彼の唇に触れたくなってしまってどうしようもないのだ。

鋭い目つきをしているけれど、目尻は下がっていて優しげだ。目を閉じるとその目つきが見えないから、なんだか可愛らしくもある。

まつ毛は長くて一本一本がしっかりしていた。形のよい凛とした眉毛に触れてみると毛並みのいい馬の毛のようにつやつやとしている。馬というよりは(オオカミ)みたい、という印象の彼だけれど。なんとなく尖っていて、でも気高い。

私の指は彼の眉間から口の方向に向かい鼻の骨を辿って鼻の頂に到達し、そこからジャンプして唇に着地する。

この唇からは乱暴で攻撃的な言葉が飛び出す。でも、それは表面だけで本当は思慮深く優しい人なのが滲み出ている。

───この気持ちは一体なんなんだろう・・・。

心の中でポップコーンがポンポン弾けているみたいに騒がしいしワクワクしている。しかもキャラメル味の甘いポッブコーンだ。

両親の顔が頭に浮かぶ。いけないことだとは思いつつも自分を止められなくて、私は彼の唇にそっと口づけた。

あまりに魅惑的な心地に、もっと触れたくなってしまったけれど、なんとか自分を抑えて体を離す。後悔はなかった。余韻に浸りながら目を閉じる。今夜は幸せな夢が見られそうだ。
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