メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「おい。」

彼女が怖がっている様子はなかったけれど、とっさに声が出た。

「ちょっと君さ、このカップケーキ似合いそうだから持ってみて。」

「え?はい。」

杏花は玲央が差し出したカップケーキを受け取った。

「うーん、いいね!一枚だけ写真撮らせてくれない?悪用しないから。もしなんか被害を(こうむ)ったらハルが責任とるからさ。」

「ちょっと何やってるのよ。」

玲美が険しい表情で玲央の腕を引っ張る。

「そうだよ。お前、初対面でなんだよ。」

「写真くらい大丈夫だよ。」

玲央に向けた俺の言葉に杏花がさらりと返した。

「!?だからお前は───。」

「ありがとー!はいパシャリんこ♪」

危機管理がなってない、と続けようとした俺を遮って玲央が携帯で杏花の写真を撮った。

「ありがと。君に会えて良かったよ。」

玲央が杏花に向けた乙女ゲームのキャラクターみたいな美し過ぎる笑顔に何故か胸騒ぎのようなものを覚えた。

「レミ、セミナー会場見に行こ~。」

まだじとっと杏花を見る玲美に玲央が声をかけた。杏花と俺は後ろ姿だけでも信じられないくらいのオーラを放つ二人をしばらく見つめていた。
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