メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「・・・悪い。嘘ついた。」

二人が去り落ち着いてから杏花に謝る。

「ううん。でも、どうしてあんなこと言ったの?」

「ああでも言っておかないと、玲美が怖えーから。」

「あの、綺麗な女の人?」

俺はため息をひとつついてから話し始める。

「玲美と玲央は双子で、俺の学生時代の同級生なんだ。玲美はシルバーアクセサリー、玲央はナチュラル系のアクセサリーを作ってる。二人とも才能があってさ。学校のコンクールもいつも二人のどっちかが優勝してた。今は二人で会社作ってやってる。今日だってイベントの主催者に頼まれてハンドメイドで成功する為のセミナー開催するみたいだし。それ目当てに来る客も多いはずだ。主催者からの招待だから出店スペースだって俺たちとは比べ物にならないくらい広い。」

「すごい人達なんだね。」

『そうなんだ、それで・・・。』と言い淀んでしまう。

「・・・俺、学生の頃から玲美に何回か告白されてるんだよ。」

「そうなんだ。」

彼女は特に表情を変えることはない。そりゃそうか。

「その度に気持ちには答えられないってはっきり言ってるけど、わかってもらえなくてさ。彼女出来ると相手に嫉妬して攻撃的になって・・・だから誤解されないように・・・。」

「・・・私の為に言ってくれたんだ。」

嬉しそうな笑みが顔に広がる。

「ち、違げーよ。ただ面倒くさいから・・・。」

「それでもありがとう。」

彼女の顔面にまで『ありがとう。』と書いてあるようでなんだかくすぐったい。

「・・・お前は?」

「え?」

「お前は・・・いるのか。彼氏・・・とか。」

何でそんなことを聞いたんだろう。否定されれば今までついつい触れてしまったことへの罪悪感を払拭出来るとでも思ったからかもしれない。俺ってやつはこんなに鋭い目つきをしているくせに、うんざりするくらい小心者だ・・・でも理由はそれだけだろうか。
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