メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「いないよ。」

特に答えにくそうな様子もなく胡瓜の浅漬けのようにあっさりと返ってきた答えにホッとする気持ちがじんわりと胸に広がったが、俺の唇は更なる質問を発した。

「いたことは?」

「あるよ。」

その答えに彼女が男に抱きしめられたりキスをしたりその先のことをしている風景を想像してしまう。

───そうだよな、ある(ヽヽ)よな。

心の中がどんよりと曇ったような気がするのは何故だろう。推しているアイドルに彼氏がいたのが発覚した・・・みたいな気持ちか?それともかわいい妹に彼氏がいたことを知った兄の気持ちか?それとも娘がもう子供ではないと知った父の気持ち・・・?いや、さすがに父ではないか。そう思いたい。

「・・・でもね。あんまり興味なかったの、恋愛。」

「え?」

「ドラマとか漫画とかって恋愛のお話が多いじゃない?私そういうの観ても、恋愛以外の面───友情とか夢とか───そっちの方に注目して観ちゃってた。好みのタイプ、とかもわからなかったの。芸能人の誰々がかっこいいとかも特に思ったことなくて。」

「別にいいんじゃねーか。無理矢理興味持つもんでもないだろ。」

「友達が集まるとだいたい恋バナになって、でも私は入っていけなくて皆に心配されたりして。そんな中で学祭の時に違う学科の男の人───友達の友達───に告白してもらったけど、私よくわからなくて。嬉しい、という気持ちもなかったし、もちろん嫌な気持ちもしなかった。そうしたら友達が『いいやつだし付き合ってみたら?恋に目覚めるかもよ。』って。」
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