メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「今までで最高の売り上げだよ。お前のお陰だ。」

イベント一日目。私達のお店は大盛況の後に幕を閉じた。明日はお店の内装を変える予定なので、パーテーションと壁の間に入ってパーテーションにかけた布を二人で外しながら暖人が言う。

「そんなことないよ。暖人の作品、どれも心がこもっててすごく素敵だったもん。」

そう言うと布を頭からバサッと被せられる。

「え?」

訳がわからないでいると暖人も布の中に入ってきて、広い展示場の喧騒の中で二人だけの秘密の空間が出来た。

彼と目を合わせると泣きそうな、熱を帯びた目で見つめ返してくる。何事だろうか。体調が悪いのかもしれない。

「どうしたの・・・!?!?」

そう言った瞬間、目の前に彼の胸があった。後頭部に手が当てられてぎゅっと胸に押しつけられる。背中に添えられた熱い手のひらも私の体を彼の体に力強く密着させる。このまま彼の中に取り込まれてしまうのではないかと思うくらいだ。
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