メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「私といると?」

「何でもねぇ。」

そう言って目を逸らしてしまう。

「気になるよ・・・。」

「言わない。忘れろ。」

そう言って布をめくって外に出ようとする彼の黒いカーディガンの袖を強く引っ張る。そんな自分に驚いた。どうしちゃったんだろう私、と思いつつもどうしてもその言葉の先が知りたい。

「ねえ何?教えて?」

「しつこいな。袖伸びるじゃねーか。アラサー男の萌え袖なんて需要ねぇから。」

「お願い。」

暖人は『だああもう、しょうがねぇな。』と苛立ったように言って布を元に戻す。

「お前といると・・・幸せだよ。」

彼はそう言うとその言葉に驚く私の前髪を上げ、露になったおでこに口づけた。

柔らかい唇が一瞬優しく触れただけなのに脳が震えたような気がした。そして心には何か温かいものが宿ったようだった。

この時の私は気づいていなかったけれど、その温かいものは心の中でつぼみを開き始めていた恋の花をぽかぽかと照らしていた。

この花が満開になるのは数時間後のことだ。
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