メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
喉が痛くなりそうなくらいに甘ったるい、べたっとしたような感情。まるで歯にくっつくキャラメルみたいだ。

私は0歳の頃から予防歯科に通っていて、今まで虫歯になったことが一度もない。歯医者さんは定期的に通うところで、怖い、という印象はなかったから、絵本やテレビでそのような描写がされていてもよくわからなかった。

そういうことがあって、甘いものは好きだけれど、キャラメルのような歯にくっつく食べ物はなんとなく食べるのを避けていた。親に禁止されていたわけではなかったけれど。

でも友達がキャラメルをくれたりハロウィンでもらったお菓子の中にキャラメルが入っていると、少し興奮したものだ。もらったのだから食べなくては申し訳ないと言い訳をしつつ、ちょっと悪いことをしている気持ちになりながら食べるキャラメルは夢を見ているかのように美味しくて、初めて食べた時私の心に強烈な印象を残した。ハロウィンが来る度に今年もキャラメルが食べられるのではないかと期待していた。

歯にくっついてしまう甘いキャラメルを初めて食べた時のように、私は今、ついに知ってしまった恋というスイーツに心を支配されていた。なんだか秘密の悪いことをしているように感じて、でも幸せで仕方がなかった。

起き上がると和室の襖は閉まっている。暖人は布団に戻ってまだ寝ているのだろうか。

色々と考えているだけで顔も体もすっかり熱くなってしまった。テラスに出て海からの風を浴びて冷まそうと思い立ち、私はベッドを降りた。
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