メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
ごくり、と唾を飲んでから口を開く。俺が自分自身を保っていられるうちに言っておこう。

「お前の幼馴染───昨日来てた知的な感じの新婚さん───よくわざわざこんな遠くまで来てくれたな。」

「本当。私も聞いてなかったからびっくりしたよ。星を見に行くのが趣味の二人だから星を見てきた帰りに来てくれたんだって。」

「・・・オーダーメイドやってやる。結婚祝い。二人見てイメージ湧いたんだ。」

「本当?」

杏花はパッと明るい声になった。本音を言うと実際に時計を贈る相手を見たから、ということよりも、これからもこいつと会う口実が欲しいからという不純な理由の方が大きかった。これは仕事だ・・・そう誰かに言い訳をした。

「ただし、ただでは作れねえな。」

「もちろんお金は払うよ。バイトもしてるし。」

「・・・そうじゃなくて。」

少し体を引いて彼女の体をじっと見つめながら言った。風に吹かれて長い髪が揺れる。目の前の部屋の中にはベッドが見える。

───散りゆく俺の理性よ。お前はよく頑張った。俺はお前を誇りに思う。お前がここにいたことを俺は決して忘れない。
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