フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
最終章~偽りの終わり
結局、銃創が原因で高い熱が出てしまい、秋吉先生に年内一杯は入院継続を言い渡されてしまった……。
あれからレイは現れず、ひと言も話してない。
(それで、いいんだ……これ以上関わるとつらさが増すだけだから)
一時の、華やかな夢物語だった。
所詮平凡以下の私には相応しくない、別世界の
住人なんだから。
(休み明けになったら……会社に辞表を出さないと。それから、実家に帰る準備と……)
頭の中だけでは足りず、ノートを広げてすべきことをリスト化する。物覚えが悪い私が、香澄に言われて始めたことだ。
そういえば、会社を辞めるまでの住まいはどうしようか。
ああ言った以上、退院したらすぐに荷造りして出ていかなきゃならないだろうな。
(ウィークリーマンションっていくらだろう……)
スマホで家賃の相場を調べようとして、メッセージが入ってるのに気づいた。
“やっほ~年明けに辞表を出して実家に帰ることにしたよ”
相手は香澄で。まったく同じ考えかたをしていたことを伝えると、“うちら、めっちゃソウルメイトじゃない”なんて、高校生のような軽いノリのメッセージが来て、暗く重い気分が少しだけ楽になった。
“失恋って理由も一緒だね”ーーこう送ろうとして、指が止まった。
香澄は何もかも自分で選んだ。それに対して、私は流されてきただけで……。
それに、彼女には新しい命が宿ってる。
独りぼっちじゃない。
その違いは、小さいようで大きくて。
やっぱり、私と香澄は違ってた。