フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
ミレイ王女からわざわざ手渡しを、とレイに言われていたらしく、王女様は香澄にも手紙を渡した。流石に社長令嬢でも王族に接するなんてなかなかないから、香澄には珍しく緊張している様子だった。
「年が明けてから読んでほしいそうよ。きっと明日には帰国するからでしょうね」
「…………!!」
帰国……
レイが、帰国?
どこに??
「えっ、レイ……王子殿下は……もうしばらく日本で暮らすのではないのですか!?」
茫然自失状態の私にかわり、香澄が遠慮を投げ捨ててミレイ王女に詰め寄ると、王女はあからさまなため息をついて、椅子の上で脚を組んだ。
「そこまで知らないわよ。けど、きっかけは何にせよ、レイはやる気を出しているわ。国を建て直すために……
わたくしも、王女という身分を捨てて彼に協力するつもりよ。
なまじ身分などあると動きづらいもの」
「…………それは……レイとの……結婚のためでもあるんですか?」
絞り出すように、何とか声を出した。
一番ハッキリさせたいことだったけど、ミレイ王女にはフン、と鼻で笑われた。
「あなたはわたくしの命の恩人だもの……無礼な質問は忘れて差し上げてよ」
もしもレイとどうこうという話になっているなら、この王女様なら嬉々として報告してくるはず。
なら……まだ大丈夫なのかな? とホッと胸を撫で下ろして、すぐに自分を叱りつけた。
(何をホッとしてるの!レイが私から離れたという事実に変わりはないのに……)