フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

「ねえ、さくら」

お母さんが遠慮がちに訊いてきた。

「……何?」
「本当に、後悔しない?愛知に帰ること」

理由は訊かない。けど、それでいいのかとお母さんは言いたいんだろう。

「あなたが本当につらいなら仕方ないわ。でも……真宮さんは本当に、あなたのこと大切にしていたように見えた。
たった数日だけご一緒させて頂いただけだけど。お父さんも、彼を認めたのよ。
“彼ならばたとえ無一文でもさくらをやれる”……って。二人なら乗り越えることができるだろうって言ってたわ」
「……お父さんが……」

反対するとばかり思ってたのに……。お父さんはレイを認めてくれたんだ。
そして、お父さんからの嬉しい言葉に、じんわりと嬉しさがこみ上げる。

「諦めるのは簡単よ……でも親としては、本当に好きなら諦めないで欲しいの。後悔して欲しくない。
わたしの結婚の時だって、高校生相手にけしからん!とお父さんはわたしの家にも上げて貰えなかったのよ。しかも、会うのを禁止されて……
でも、お父さんは1年かけてねばり強くわたしの親を説得してくれたわ。
会えなくても、こっそり手紙をやり取りしてたし。信じて待っていたからこうしてあなたを生むことができた。
あなたも後悔しないよう、真宮さんを信じてみたらどうかしら?」

スムーズに結ばれたとばかり思っていたのに、まさかお父さんとお母さんがそんな苦労の末結婚できたなんて。だからこそ、実感のある言葉だった。

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