フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
ひとまず、お正月……お母さん達が帰るまではマンションにいることに決めた。
せっかく招待されて東京にいるのに、高いホテル代を払わせるのは申し訳ないし。
「お母さん、ちょっと買い物してくるね」
「近くだけど、気をつけるのよ」
「大丈夫だよ」
入院中に使って足りなくなったものがあったから、ショッピングモールで買い足そうと思いレジデンスを出た。
(警備だっているし、近くなんだから大丈夫なのに……お母さんも心配症だなあ……でも、嬉しいかも)
久しぶりに両親とお正月を過ごせる。
この3年、和彦中心で帰ったこともなかったから、久々に親子水入らずだ。
(本当に……私が和彦に費やした3年……なんて無駄な時間だったんだろう)
これも、レイが招待してくれたからだ。
彼と過ごしたのは半月くらいなのに、和彦といた時よりも濃密で幸せな時間をくれた。
(レイ……ありがとう)
これからゆっくりとでも良いから、失ってきたものを取り戻そう。そう思ってレジデンスの入り口からしばらく歩いた時、またゾクリと背筋が寒くなった。
(さっきと同じ視線?)
振り向こうと顔を動かした瞬間ーーいきなり後ろから大きな手で口を塞がれ、腰を抱えて植えこみに引きずり込まれた。
(誰!?)
恐怖で頭が真っ白になるけど、嗅覚が嗅ぎなれたパフュームの香りをそこへ届ける。
(まさか……)