フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約


「なに言ってんだよ……さくら、怒ってんのか?ああ、香澄と婚約したからか……仕方ないだろ?俺が出世するために必要な女だからな。
本当に愛したわけじゃないさ。
ガキでも作りゃその父親ってことで認めざるを得ないだろ?
でなきゃ、あんな気の強い鼻持ちならないお嬢様なんざ相手にするわけないさ。俺の言うこときかねえわ、偉そうに叱りつけてくるわ……鬱陶しいったらなかったぜ」

得意そうに和彦は香澄を貶すけど……彼女の言葉じゃないけど、彼がここまで腐った人とは思わなかった。

「勝手なことばかり……!あなたこそ何様?浅い付き合いしかしたことない癖に、香澄を悪く言わないで!香澄はとっても素敵な女性なんだから」

頭に来て反論すると、和彦はムッとした顔をした。やっぱり、自分の言葉を素直に聞かないと途端にへそを曲げる。まるで、子どもだ。

「なに言ってやがる!おい、さくら。調子乗るんじゃねえぞ。御主人様に向かって歯向かうつもりか?」
「え?」

御主人様?
この人……なに言ってるの!?

「おまえは、俺と結婚しなきゃならないんだ。もう回りには結婚するって言っちまったからな。あのクソ女が振りやがったせいで予定が狂ったが、おまえと結婚すりゃ俺の体面は保てる。俺の役に立てて嬉しいだろ?」

和彦はニヤニヤと笑いながら腕を伸ばしてきた。逃げようと駆け出すと、腕を掴まれる。

「おっと、逃げようとするなよ。でないと閉じ込めることになる……いや、それもいいかもな。ペットは閉じ込めて、躾けてやらねえと」

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