フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約



ひらり、と和彦の身体が舞い、そのまま地面に叩きつけられる。その彼を、紺色の制服を着た人たちが取り押さえた。

「さくらさん、大丈夫!?」

私を助けてくれたのは小椋さんで。安心した私は腰が抜けて、その場でへなへなと座り込んでしまった。

「さくら!」

声に振り向くと、お母さんが駆けつけてくるところだった。

「小椋さんから知らせを受けて……大丈夫?」
「お母さん……!!」

今さらながら恐怖から体がガクガクと震えた。お母さんが私を抱き締めてくれて、安心感からようやく涙が出てきた。

「もう、大丈夫です。やつは警察に突きだしますんで!一巻の終わりです!!」

マンションに戻った小椋さんが力説して、あのお馴染みの敬礼をする。何だか懐かしくて、少しだけ笑えた。

「レイ王子が来なくて申し訳ないです……なにせ、急遽帰国を決められたので……会社の引き継ぎや出国の手続きや諸々で忙しくて……それと、これ」

小椋さんはダイニングテーブルの上に、大きなビロード張りの箱を置いた。

「これは?」
「このマンションの権利書です!さくらさんの名義に書き換えてあります。そのまま住んでもいいですし、売ってもいいとおっしゃってました」

レイが……私に?

彼からの意外すぎる贈り物に、頭が真っ白になった。


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