フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
『ですが、わたくしは思ったより長生きしました。そして、成長したわたくしは母后と大臣の悪政に対抗しようと、思いきって自ら国民の前に姿を現したのです。
民の目の前で政治をすると宣言し、王宮に戻りました。
それからでしょうか。食事に少しずつ毒が混ぜられるようになり、あちこちで事故に遭うようになり、しまいには異国の使者を装ったエージェント(暗殺者)まで差し向けられたのです』
「…………」
ミルコ女王のあまりにも悲惨な情況に、言葉を失った。
しかも、殺意を向けてきたのが実の母親と祖父。
どれだけ、悲しかっただろう……。
『だが……そのエージェント……アキトこそ、わたくしが愛した唯一無二の男性。レイの父親なのです』
「えっ」
『アキトは、生きるのを諦めようとしたわたくしに……“生きぬくことがやつらへの最大の復讐だ”ーーと。わたくしに、生きることを。生きる喜びを……そして、誰にも愛されたことがないわたくしへ、初めての愛を教えてくれました。
アキトもわたくしを愛してくれた……
それだから、レイを授かったのです』
身分が低い……どころか意外すぎるレイのお父さんの正体だけど。本当に愛したんだろうな……病気で子どもが絶望視された女王陛下に、奇跡を起こしたんだもの。
そして、こう続けられた。
『レイが3つの時に起きた、暗殺事件。アキトはレイを庇い亡くなって、わたくしとレイは乳母のつてを使い日本へ逃げた。わたくしは働きながらレイを育てたが、やはり持病と長年体を蝕んだ毒が、わたくしの寿命を縮めていたのだ。残された時間が少ないことが自分でもわかる』