フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約

『レイは、すごくいい子。ですが、きっと国を憎んでる。いつもいつも醒めた目をして、子どもらしくない。乳母兄弟のカール(小椋)以外、親しい者もいない。母として心配になります』

だから、とこう続いた。

『わたくしはレイにこう言いました。“あなたにもきっと大切な女性(ひと)ができるはずよ。その時はこれを贈りなさい”……と。王家に代々伝わる指輪を預けました』

「……指輪?」

ドキン、と心臓が鳴る。

今も指につけている、レイからプレゼントされた指輪。まさか……?

『王家の者が代々、伴侶としたい異性へ贈るエンゲージリングです』

そして、ざっと描かれた指輪のデザインは……レイがくれたものとまったく同じ。

『通称レインボー・アイズと呼ばれる、オパールと違い無色の鉱物の中で7色に輝く石がはめられています。グレース王国のみ産する特殊な石です。
これを贈ったということは、レイがあなたへ求愛した証。
どうか、息子を信じてやってください。
不器用で本当の気持ちはなかなか言わないでしょうが、きっとあなたを大切に想っているはず。
わたくしはもうすぐ亡くなりますから、どうかレイを……息子をよろしくお願いいたします』

最後の方はほとんど乱れて読みにくく、どうにかそれだけ読み取れたけど。懸命に伝えようとする必死な想いを汲み取ることができた。


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