フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約


王家に代々伝わるエンゲージリング……

ドキン、ドキンと心臓がかつてないほど高鳴る。

次にレイからであろう手紙を、震える手で広げた。

『さくらへ。
突然、何も言わずに消えることを許して欲しい。
オレ……私は、グレース王国へ帰る事にした。
あなたを傷つける者たちの存在を、どうしても許すことが出来なかったからだ』

「えっ……」

意外すぎる理由には、驚くしかない。

(私が、傷ついたから?
だから……レイは、グレース王国へ帰る事にしたの?)

『母と父を殺した国に、二度と帰るつもりはなかった。
実際反体制派の有力者からは、特別待遇で必ず国王に据えるから、と何度も帰国の誘いを受けていた。
だが、私に故郷はひどく冷たく苦しい思い出しかない。何の義理も義務感もなかったし、どうでもいいとさえ思ってた……あなたが傷つくまでは』

やっぱり……!

私が秋吉先生に暗殺事件の銃創を診てもらった時、レイからはすごく悔しそうな。それでいて相当な怒りを感じた。

まさか、あれがきっかけになっていたなんて。

そういえば、急に素っ気なくなったのが病室に移った時だったっけ。
もしかしてあの頃には既に帰国を決めていたから、頭が一杯になって?

とにもかくにも、先を読もうと次に目を向けた。



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