あざといきみの誘惑は
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友利、手当してやって。
青羽の一言で、私の周りだけ張り詰めていた空気が一気に弛緩した。
許す、とは一言も言われてないし、なんならまだ警戒は怠っちゃダメなんだろうけど、ここで一生分の過重ストレスを味わった気分。
「穂村、ちゃんと前押さえてろよ」
「あ、うん」
背後に回った友利が、私が来ていたシャツをたくし上げる。
蹴られたの、背中と左脇腹だからね。自分じゃ痛くて上手く手当できないから。
「……あの、さ」
「ん?」
「なんでバレたのか、聞いてもいい?」
それが謎だった。
信頼されてる、ハズだった。
それなのに、彼らは失望したような顔なんて一ミリも見せず、まるで赤の他人を見ているような瞳をしていた。
友利は隣に置いた救急箱から湿布と包帯を取り出しながら、なんてことないように言う。
「ああ、それ?俺らん中には、ちょっと特殊なルールが存在してんの。その中に、他人を信頼すんな、ってのがある。そんだけ」