あざといきみの誘惑は
「んなビビるなって。現時点でお前をどうこうするつもりはないから」
……やっぱり、やさしさなんて感じられなかった。
彼らの言葉は、どこにもやさしさが存在しない。
常に無機質な、思考を共有する道具でしかないから。
現時点で、なんて言葉を付けてくるあたりが、隙のなさを表している。
「……まあ、変な行動したら、即刻切るけどな」
……ほら。さっきはやさしげな口調だったのに、急に冷え冷えとした声音になった。
友利は救急箱をなおすと、いつも通り机の上で勉強を始める。
どこの高校に通ってるかは知らないけど、前勉強を教えてもらったことがあって、とってもわかりやすかったことを覚えてる。
そんな友利に、さっきから疑問に思っていることをぶつけた。
彼が何気にいちばん話しやすい人だったし。
「……ねえ、友利。私はスパイとして、どんなことをすればいいの?」