あざといきみの誘惑は



友利はちらりと私を一瞥すると、くるりと後ろを振り返って青羽を呼んだ。




「青羽ー、穂村がスパイって何すればいいのかだってさ」




サクヤ、というたぶん男子?とキッチンにあるカウンター席で話していた青羽は、一瞬視線を私に固定すると、サクヤと一言二言話してこっちに歩いてくる。

そんな青羽の背後から見えるサクヤは、目は見えないけど、なんとなくジッとこっちを見つめている気がする。



サクヤ。ここの最後の幹部生。
この中でも、最高に異質な存在。

顔バレ身バレ防止のためか、全身を真っ黒な服で覆って、顔はフードを目深に被り、なおかつ白マスク装着の完全武装。


青羽や友利には何度か話しかけているのを見かけたことはあるけど、私とは一言も喋ったことないし、まず話してくれない。


彼自身のことも、サクヤっていう名前ぐらいしかしらない。男子かどうかさえも、正直怪しいくらい。


まあ、背はかなり高いから、男子だとは思うけど。



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