長い梅雨が明けた日



「遅っ」


家の前には制服姿の優弥。

まださっきの優弥が理解出来ない私は無言で歩き出した。

でも。

「理乃、走れるなら走るぞ。マジで時間ヤバいんだから」

いつもと変わらない態度の優弥に少し安堵して、気持ちを切り替えるように走り出した。


学校前の狭い歩道に入ると他の生徒に混じって歩きながら息を整えた。

「理乃、病み上がりなんだからちゃんと汗拭けよ。エアコンで身体冷やすからな」

「わかってるよ」

「でも気をつけないとマーク見えるから注意しろよ」

「何のマ」

マーク?と言いかけた私は咄嗟に口を閉じて優弥を睨んだ。

着替えた時に見た首元。


…こんなのただの虫さされじゃん


そう思った私は優弥の言葉に耳を貸さずに無視して教室へ逃げ込んだ。

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