長い梅雨が明けた日

「…なんで?怒ってないならわざわざ雨の中、傘が無いのに一人で帰ったの?」

琴美は少し驚いた表情で私に問いかけた。


そっか。

琴美は河野に怒ってただけか。

私が自主的に帰ったと言ったから口調も慎重になって私がそうした理由を知りたいらしい。

さっきまで少しトゲのある口調だった琴美がなりを潜めたのを見て、私も自然と落ち着いた。

ペットボトルの水を一口飲んでから、あの日の事の成り行きを話し出した。



傘が無い私は河野に頼んで傘に入れてもらった事。

でも途中で、相合い傘なんてしてたらまた噂されると気付いた事。

河野は今更だろと気にしなかった事、にした。
本当は私が先にそう言ったんだけど、河野を悪者にしたらまた琴美が怒ると思ったから。

河野は気にしないでそのまま帰ろうと言ってくれたのに、私が噂されるのを嫌がった事。

だから、一人で走って帰った。


これなら筋が通ると思った。

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