長い梅雨が明けた日

そんな河野を初めて見た私は、そのまま河野が出て行ったドアをじっと見ていた。


河野に最初「理乃」と呼ばれた瞬間、何か特別なものを感じた。

女友達や優弥に呼ばれ慣れてるはずの名前。

なのに、まるで自分の名前じゃないような特別な響き。


だから思わず私も同じように「健二」と呼んだ。

優弥がそう呼んでいたから。

だけど。

自分で「健二」と呼んでおきながら
そう呼んだ瞬間に胸が締めつけられるような感覚があった。
と同時に妙な気恥ずかしさ。

それに加えて河野の嬉しそうな顔。


その後の帰り際に二度目の" 理乃 "。

一度目に呼ばれた時より、二度目の方が更に特別感を増していた。

< 167 / 346 >

この作品をシェア

pagetop