長い梅雨が明けた日

まさか神田がそこに食いつくとは思われなくて適当に誤魔化した。

「あー、優弥と話す時はたまに呼び方が移って言っちゃうんだよな」

「…なのに理乃ちゃんにはなんでそう呼ばないの?」

妙に絡むような言い方をされたから俺も少し構えて話した。

「一度、そう呼んだら嫌がられたからな」

…もしかしてあの時の話を神田は理乃から聞いているのか?


「…」

この話題に食いついたから何か言われると思ったが、神田はまた無言で歩き始めた。

それがなんとなく気になったから、神田の横に並んで顔を見ようとした。

でも背の低い神田は傘に隠れてやっぱり表情が見えない。

< 220 / 346 >

この作品をシェア

pagetop