長い梅雨が明けた日
右手でドライヤー、左手は私の髪を梳く優弥の姿が鏡に映っていた。
その表情はさっきまでと全然違った。
まるで鼻歌でも歌いそうな上機嫌な表情に変わっていた。
いつもの、私の知ってる優弥だった。
「…さっき怒ってなかった?」
ブォーーーッ
「あ?何か言ったか?」
ブォーーーッ
「なんで機嫌直ったの?」
ブォーーーッ
「なんだって?」
ブォーーーッ
…ダメだこりゃ。
鏡に映る優弥は、まるで美容師のように私の頭しか見ていなかった。
几帳面な部分のスイッチが入った優弥は
納得するまで止めようとしないことを知っている。
まぁラクだからいいか。
美容師モードの優弥の気がすむまで
大人しくお客さん役でいようと諦めた。