長い梅雨が明けた日
雨のせいで顔がびしょ濡れだと気付いた私は瞬間的に俯いた。
雨露に濡れた顔で河野を見つめていた自分が急に恥ずかしくなったから。
でも、俯いた私の頬に河野の手の温度を感じた。
「ちょっと傘から出ただけでびしょ濡れじゃねぇかよ」
手の平で私の頬の水気を拭う河野。
……何これ?
今まで河野に頭を叩かれたり冗談で肩を抱かれたりと、それなりにスキンシップは結構あった。
だから私が河野の腕に抱きついてても違和感なく歩いてたというのに…。
頬を拭う河野の手がいつもより優しく感じて余計に恥ずかしくなって思わず目線を上げた。
視線を上げただけのつもりだった。
けど。
私の視界には河野の驚いた瞳がかなり近い位置にあった。