長い梅雨が明けた日

そのまま再び歩き出す。


少し前を歩く河野に手を引かれて。


香菜に話しかけない。
そう約束してくれたように感じて嬉しくなった。


「理乃」

俯いて嬉しさを隠している時に名前を呼ばれて身体がビクッと反応した。

その時、つい繋いだままの手を引いてしまった。


けれど。


河野の手は離れなかった。

それどころか"離さない"とはがりに握る手に力がこもった。


「理乃は豊永とよく話すのか?」

「…豊永?」

「…」

強く握られて照れくさくなっていたら脈絡のない名前が出てきた。

つい問い返したが河野は無言のまま。


「…声をかけられて返事するくらいかな。
優弥の友達なのは分かってるけど、私はちょっと苦手だから」

「…苦手…?」

「豊永は話しやすいけど、話を聞いてくれるタイプじゃないからかな?」

「…そっか。豊永には気をつけろよ」

「え?何を?」


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