長い梅雨が明けた日


そこでやっと自分の手の感触に気付いた。


いつの間にか握り拳でいた俺の手を。

理乃の手を離していたことを。



無言のまま俯く理乃。


意を決した俺は無言のまま
手を伸ばして再び理乃の手を握る。

すると理乃は、ビクッと身を竦めたけどそれだけだった。

俺が手を握っても嫌がらなかった。


それどころか、軽く俺の手を握り返した。

その反応が嬉しくて指先を動かして指を絡めるように握り直す。


「…ってない」


微かに聞こえた理乃の声が震えていた。


「…っ、き合ってない」

か細いけど俺にちゃんと聞こえるように言い直す。

まるで俺に誤解されたくないとでも言うような姿に見えて堪らなくなる。


「理乃は鈍過ぎるんだよ」


そんな軽口も自然と甘い口調になる。

繋いだ手はそのままで、空いた手を理乃の腰にまわして引き寄せる。


俯いたままの理乃を難なく抱きしめて実感する。

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