長い梅雨が明けた日

背中から抱きしめられた体制になり、慌てて離れようとするが動けない。

「あの、ありがとう。急に立ち止まってごめん」

とにかくお礼を言って離れよう。

「こっちこそ余所見してたからごめんな」

律儀に謝罪してくれる豊永だが、何故か腕に力を込められた。


「トヨ、ごめんな。理乃が邪魔して」

優弥の声が聞こえたと思ったら、私の腕を掴んで引っ張った。
おかげで豊永から離れられてほっとした。

「白井を庇って豊永が怪我したらどうすんだよ」

河野が私の頭を軽く小突いた。


「理乃ちゃんを怪我させるくらいなら俺が下敷きになるさ。ってか、違和感無さ過ぎてスルーしかけたわ。
なんで優弥と河野が教室にいるんだよ?」

朝から爽やかに笑う豊永が私の疑問を代弁してくれた。

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