長い梅雨が明けた日

そうなのだ。

隣のクラスの二人が、朝から私の席に居座って琴美と談笑していたのだ。


初めて見たその光景に思わず立ち止まってしまったのだが…。


「うちの親がこいつを心配してたからな。登校してきたか確認に来たんだよ」

「なんだ。俺に用があるのかと思ったわ。理乃ちゃんの生存確認かよ」

相変わらずだな、と笑う豊永が私を見つめて微笑んだ。


……。

一応微笑み返してみたが苦笑いになってるかも…。

優弥と親しいから私もそれなりに話すようになった豊永。
唯一私のことを"ちゃん付け"で呼ぶ男子だ。


豊永は見た目でも河野とは女子の人気を二分するイケメン男子。

親しくはなったけど、彼の持って生まれたモテオーラのせいで私には少し近寄り難い存在だ。

『理乃ちゃん』と呼ばれることにも慣れてなくて一度『ちゃん付けやめて』と言ったけど『理乃ちゃんの方がしっくりくるから』と聞き入れてくれなかった人。

正直苦手。
< 56 / 346 >

この作品をシェア

pagetop