長い梅雨が明けた日
「別にそんな事で琴美と気不味くならないよ」
申し訳なさそうに俯く琴美の頭を撫でながら声をかけると琴美が顔を上げた。
「…ありがとう理乃ちゃん」
か弱い声で頑張って笑顔を向ける琴美の目は今にも泣きそうに潤んでいた。
そんな琴美が落ち着くまで少しだけ話題を逸らそうと私も中学の頃の話を切り出した。
「私もね、中学ではそこまで仲が良い女友達がいなかったんだよ」
私の言葉を聞いた琴美が目を大きく見開いた。
「生まれた時から当たり前に優弥がいたから小学校でも中学校でも優弥をネタにからかわれる事が多いだけで特定の女友達はいなかったんだ」
いつもの天井を見ながら中学時代を思い出した。
特定の女友達。
そんなの今まで気にしたことなかった。
部活で仲良くなった女友達は沢山いたけど、こんな風に腹を割って話す女友達はいなかったんだと今になって気付いた。