長い梅雨が明けた日
ドアから優弥が顔を出した。
けれど。
ドアを凝視したままの私。
優弥はそんな私に不審がりながらも声をかけてきた。
「…もしかして何か視えた?」
からかう優弥の声を無視して薄い夏用の掛け布団を頭からすっぽり被る。
…視えないものは視えない。
無言で気休めにもならない掛け布団を握り締めて無心になろうとした。
「クッ…悪かった。理乃、ごめんな」
軽く笑いながら悪いと微塵にも思ってない声に苛立って、適当に片腕を出して振り回すと優弥の腕にヒットしたようだ。
俗にいうお化けの類い。
視えないから本当にいるのかわからないから気にしなければいいんだ。
と思っても、幼い頃にお化けにビビった私は小学校のキャンプで同級生にからかわれて大泣きしてからはトラウマのようになってしまった。