きみは微糖の毒を吐く
「こーいうのいいんじゃない」
絢斗くんが立ち止まったお店はかなりガーリーなブランドで、カジュアルというよりは清楚可愛い感じだ。
そのショーウィンドウに飾られている、袖がふんわり丸くなったくすみピンクのワンピース。
ピンクだけど大人っぽくて、スカート丈も長めだから甘すぎなくてすごく可愛い。
本当に好きなのはこういうのだけど。
「可愛い……けど私には可愛すぎるんじゃないかな」
へらりと笑うと、絢斗くんは見透かしたように目を細める。
「お前、何にそんなに怯えて生きてんの」
「え……」
「何に気遣ってんの?何が怖いの?何でそんな自信ないわけ?」
「っ……そういう、わけじゃ」
「着たい服着ればいーだろ。
ちゃんと似合うから安心しろ」
絢斗くんはそう言うと、私が動揺している間に店員さんに声を掛けて、私をワンピースを試着室に放り込む。
なんて強引なんだ……と思うけど、嬉しくてにやけてしまう。
私が好きな服をわかってくれていたことも。私の好きを否定しないでくれることも、似合うよって、言ってくれたことも。