きみは微糖の毒を吐く




それからは毎日この本をお守りみたいに持ち歩いて、昼休みには1人でこの本を読んで過ごしていた。


『本なんか読んでる、ウケる』
『真面目ぶって』

梨乃ちゃんたちにはそわなことを言われたけれど、前よりは気にしなくなった。







「──引っ越すことになったの」




親からそう言われたのは、1年生が終わる頃。




「でも県内だし、ちょっと遠くなるけど1年通った学校だし、転校とかはしなくても大丈夫だから……」


「転校、してもいいの?」


「え……してもいいけど、せっかく慣れた高校なんだからこのまま通った方がいいんじゃない?」


「私、転校したい」




お母さんは不思議そうな顔をしたけれど、私の固い意志に何か察してくれたのかもしれない。



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