きみは微糖の毒を吐く



「ごめん、急に来て」



何も言わない私に困った顔をして、風間くんは話を続ける。




「昨日青木が木村さんに会ったって聞いて、どうしても話したくて来たんだ」




青木っていうのは、梨乃ちゃんの苗字だ。

梨乃ちゃんが私と会ったことをどんな風に話していたのか、想像がつくような気がして怖い。




「俺、木村さんが転校してからもずっと忘れられなくて。正直、誰にも言わずに転校しちゃうなんてショックだったし、もう会えないと思ったら寂しかった。

あの時クラスで何があったのか、後から聞いて……俺、何も知らなくて、守るって言ったのに守ってあげられなくてごめん」




「……ううん、私もごめん。急に転校して」



「まだ好きなんだ、木村さんのこと。
今度こそ絶対に守るから、俺と──」





風間くんが言いかけた、瞬間。





「乙葉、何してんの」




後ろから聞こえた低い声に、驚いて振り返る。




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