きみは微糖の毒を吐く
「中学生の時、顔だけ目当てに近づいてくる女ばっかりで、男には疎まれてて、誰も本当の俺を見てないし、俺の居場所なんてないと思ってた」
絢斗くんがぽつりぽつりと話始める昔の話を、漏らさないように、一言一言に頷きながら聞く。
絢斗くんにも、そんな風に思ってた時期があったんだ。
「その時にあの本を読んで、世界は広いし、今はなくてもいつか俺の居場所ができるのかもって思った。それで、モデルのスカウトも興味なかったけど受けてみた。そしたら、俺のこと必要としてくれて、結局そこが俺の居場所になった」
「そうだったんだ……」
モデルのお仕事頑張ってるのには、そういう理由があったんだ。
『雨空のしたで』が好きってことは、絢斗くんも居場所がないって感じていた時期があったのかな、と思ってはいたけれど。
「──俺はお前の居場所になりたいし、乙葉が俺の居場所だと思ってるよ」