きみは微糖の毒を吐く
・
「ご、ごめんなさい!」
廊下でぶつかった時、乙葉の手からその本が落ちてきた時は、なんだか嬉しかった。
この本が、乙葉の居場所にもなっていたらいいと思った。
「これ俺も好き」
思わずそう声を掛けたら、嬉しそうな顔をした乙葉を今でも覚えてる。
この子、こんな風に笑うんだなって思った。
それから乙葉にも友達ができて、俺の家にも来るようになって、笑顔が増えていくのが嬉しかった。
もっと笑ってほしいと思った。
「顔がいいってだけでいいよね」
「何の努力もしなくてもイケメンはうまくいっていいねー」
そんなことを言われることも多かった俺の、本当の姿を見てくれたのは乙葉だった。