きみは微糖の毒を吐く
エピローグ
「乙葉」
「はい!」
「もっとこっち来て」
ふたりきりの、絢斗くんの部屋。
ソファーに座る絢斗くんの、わりと近くに座っているはずなんだけれど。
「こ、これ以上……?」
「嫌なの」
「い、嫌じゃないけど……」
少し恥ずかしくなりながらも、絢斗くんに腕が触れるくらいの距離に座る。
ふっ、と耳に吐息がかかって、「ひゃ」と声が漏れる。
「ちょっと、絢斗くん!?」
「かわいー反応」
ちゅ、と口づけからはじまって。
あっという間にキスに溺れて、気付けば私に覆い被さる絢斗くん。
「あ、絢斗くん」
「乙葉からしてよ、キス」
「〜〜っ」
意地悪。完全に面白がっている絢斗くん。だけど触れる指はびっくりするくらい甘くて優しい。
──微糖だと思ってた彼は、本当はとびきり甘い猛毒だったみたいだ。
「絢斗くん、好き」
「知ってる」
「……絢斗くんは?」
「さあね」
そう言って絢斗くんが落としたキスは、大好きが溢れるくらい甘くて幸せな味がした。